
こんにちは、所属ナレーターの北村直也 (noy_0207)です。
先日、中野にあるパラブラ株式会社にて、映画の音声ガイドのモニターを体験するワークショップに参加してまいりました。
映画監督・プロデューサーとお話できる貴重な機会ということで、以前から楽しみにしていたこちらのイベントがどのようなものであったか、ご紹介させていただきます。
パラブラでは定期的にこのような取り組みを行なっているようなので、気になる方はサイトを見てみるとよいかもしれません。
▷音声ガイドモニター体験ワークショップ 参加費無料で開催! 【あなたもモニターとして映画に関わってみませんか?】|Palabra
概要
当日は主に四つのパートに分かれておりました。
- 参加者全員の自己紹介
(体験者私含め2名、ゲスト2名、スタッフ数名) - 音声ガイドを知る 「蝶の眠り」冒頭の10分ほどを鑑賞、映画プロデューサー山上さんの解説
- モニター会体験 実際のモニター会を再現しながら「明日をへぐる」を鑑賞、今井監督の解説
- 質疑応答
音声ガイドが作品をより楽しむ手助けになると気づいた前半

自己紹介が終了し、「蝶の眠り」を音声ガイド無し有りの順番で鑑賞しました
音声ガイド無しの段階でシーンをどの程度理解できているかを確認するため、何が起こったかについて司会からの質問がありました。
その段階では、少なくとも物語の重要なポイントを抑えることができていることを確認しました。
余談ですが、先天性の視覚障害者と中途の視覚障害者ではこの辺りで差が出るとのことです。音からの状況判断能力、前後関係をつなぐ能力などが関係しているのでしょうか。
そのあとは音声ガイド有りの状態で同じシーンを鑑賞しました。鑑賞を終えて率直に思ったのは、たしかにストーリーのうえで重要なポイントは外していなかったけれど、音声ガイドがあるとその作品をさらに楽しむことができそうだなということです。
特にセリフや効果音で表現されていないけど映像が動いている場合のガイドや、カメラは登場人物の誰視点で映しているのかを説明するガイドは、作品をより理解するのに役立ちました。
音声ガイドは多数の視点で制作されていることを知った後半

後半は「明日をへぐる」を、前半とは違い、音声ガイドの初稿バージョンと最終バージョンを聞き比べました。ドキュメンタリー作品ということもあり、専門用語がとても多く、聞き比べの段階では最終版のほうが少し分かりやすいかなという程度に思っていました。
その後、そもそもパラブラが音声ガイドをどうやって制作しているのかという話になりました。手順は
- 原稿作成
- パラブラが主催しているモニター会で実際に当事者の意見をヒアリングする
- 同時に映画監督等の制作サイドからもヒアリングする
- 原稿修正
- 収録
です。
そこで、音声ガイドは様々な視点を基に制作されていることを知りました。
モニター会で自分なんかの意見を言っていいのだろうかと思いがちですが、その意見が新たな気づきとして採用されることもあれば、逆に採用しないこともあるのでまずは伝えてほしいとのことでした。
また、今回驚いたのは、映画監督の意見で音声ガイドが変更されることがあるという点です。
これは、撮影の際にこだわったところや、今回の「明日をへぐる」は職人のドキュメンタリーなので実際の仕事内容を現場で見て撮影したからこそ別の表現に変えてほしいというオーダーになるそうです。
映画を製作した方が音声ガイドに関わるというのは、よく考えれば当たり前なことですが、音声ガイドは視覚障害者のためだけに作っているのではなく作品の一エッセンスとして作っていることを実感しました。
全体を通して〜久しぶりに映画館に行きたい〜
実は、私はしばらく映画館に行っていません。
一人で映画館に行くのが不安であるとか、一緒に行く友達がいないとか、行かない理由を挙げればきりがありません。
それでも、今回のワークショップを通して、音声ガイド付きの映画を映画館で見たいと思いました。
できれば仲のいい友達と行きたいです。
映画を観たあとは作品について語り合うことになると思うので、音声ガイドを通じて多くの情報を得た私なら、内容を深く掘り下げた話をきっとできると思います。
そのことを当日にパラブラの松田さんにお伝えしたところ、「それは音声ガイド制作者冥利につきる。上映後に映画の感想が聞こえてくるのが一番うれしい」とおっしゃっていました。
「明日をへぐる」は9月11日よりポレポレ東中野で公開されるそうなので、観にいこうかな……。